2015年9月19日土曜日

ワタミの介護が厳しい理由

国が猛プッシュしているのが、「住み慣れた家で最期まで」という在宅医療。

たしかに、患者の家と医療機関との距離を物理的に遠ざけておけば、ちょっとしたことで医療費が使われなくて済むのかもしれない。となると、弱った老人が家にいるとお世話になるのが介護だが、そのあたりもなかなか複雑だ。


●急性期病院の日常風景
◇帰ってきてほしくない家族、帰りたくない患者

入院して治療が済んで、もう帰るだけになった患者。帰る前にいろいろとリクエストがある。自宅に帰ればほったらかされることを知ってか知らずか、帰る間際に医療従事者に甘えているようにすら映る。

「せっかく入院したついでだから、昔っから頭が痛いんでCTとって」とか、
「そういえば、ぎっくり腰で痛いからMRI撮って帰るから」と勝手に決める。

ガンコな老人だと言い出したら止まらない。丁寧にこちらが話を聞いていても、
「俺の言うことがきけないなら、もしなにかあったら医療ミスで訴えてやる」とか言い始めるし、あげく「県議会議員にうったえてやるからとか」とヒートアップしたりして、手に負えない。

患者だけではなくて家族も同様だ。

高齢者が家にいる間は家族もそれなりにお世話していたが、病気やケガでいったん入院して、楽を知ってしまうと、えてして家族はもう過去のような生活には戻りたいと思わないものだ。家に帰って来られると困るので、「おじいちゃんは、胸が苦しいと言ってました」とか「手がしびれるので」とかあることないこと言って、入院を引き延ばす工作に精を出す。

こっちも治ったなら早く帰ってもらいたいので、それは別の機会に調べるように説得する。DPCという保険制度上、入院した病気以外をだらだら診ることはできないのである。これは医者ならだれでも持っている技術。


◇退院の話を切り出すと
前フリはさておいて、核心となる退院の話をすると、だいたいこんな反応だ。

「うちではちょっと面倒みられる人がいないもので」

「長期間居られる病院に転院させてください」

「施設が空くまで、ここに居させてもらいますから」

「入院した時よりも動けなくなっているので、リハビリをやって立って歩けるようにしてください」
 (来たときからすでに寝たきりである。関節が拘縮していて、リハビリの効果がそこまで見込めない)

「在宅医療はすぐに対応してもらえないじゃないですか。病院の方が安心です」

などと自分の家に戻ってくるのを懸命にブロックする有様。家族が何人も一緒に来て、2枚ブロック、3枚ブロックとなることもある。だいたいは同じようなコースでの攻撃なので、こちらもだいたい同じような角度でスパイクを打って得点を決めて、退院に持ち込む。

まあ困るのは、施設とか転院先の病院のベッド空くまでは無下に追い出すわけにもいかないことだ。それも厚生労働省様のお達しで決まっているのだ。治療するでもなく、ただ施設の空きを待つだけの患者がダラダラと在院することになり、こうして救急病院の貴重なベッドは埋まっていく。

●入院有利な保険診療が在宅を阻む

僕が言いたいのは、保険診療のせいでオトクに入院できてしまうことが、在宅医療の普及を阻んでいるんじゃないかということだ。転院待ちの人でもその気になれば、いつまでも入院できてしまう。一泊入院すると何十万円もとるようなアメリカの医療制度だったら、まあありえないだろう。早く帰らないと破産してしまうのだから。

老人の場合だと、あらゆる優遇措置を駆使すると、激安で入院できる。

レセプトをチェックしていると、10万点(100万円)以上の医療費を使いながらも、自己負担2万円とかいう人がパラパラいて驚く。差額は当然、若い人や現役世代が払っているわけだが、家賃4万、食費5万、光熱水料 2万とか積み上げていくよりも、入院していた方が安いんだからそりゃあ家なんか帰りたくはないだろう。医療費払っても、年金はしっかり手元に入ってくるんだから。

家族もはじめての入院だと、入院費用を気にしておっかなびっくりだが、支払い金額が異様に安いことを知ってから態度がデカくなる。「こんなもんなら、いつまでもおいてもらおうかしら」 となるわけだ。医療費と介護保険を通算する制度もあるので、ますます負担額は減る。

●つぶれそうで困っているというワタミの介護

ワタミさんの有料老人ホームの料金はこんな感じ。

①入居時にかかる入居一時金(前払金)

入居一時金(前払金)プラン:終身にわたる利用権の費用で約300万~1,300万円前後。
入居時にお支払いいただき、その後は必要ありません。入居一時金には、償却期間が定められており、償却期間が終了する前に退去された場合に未償却部分が返還されるようになっております。償却期間や償却方法はホームよって異なります。

月払いプラン:入居一時金(前払金)は必要ありません。

②月々の月額利用料
入居一時金(前払金)プラン:お食事代込みで約178,000円~238,000円前後です。
月払いプラン:上記月額利用料に加えて、家賃相当額が必要になります。

③介護保険の1割負担額
介護度、市区町村によって違いますが、月々約6,000円~27,000円前後です。

④その他
おむつ代、日用品費、水道光熱費などは実費をご負担いただきます。

普通の家庭が、老人のために月々18万から24万も出せるだろうか。

僕が勤める病院がある地域だと、そんなリッチマンはほとんどいないので、有料老人ホームはいつでも空きがある。ワタミが赤字になるのもうなづける。

じゃあ老人は何処にいるのかと言えば、病院にゴネて施設の空きが出るまでいつまでもいるわけだ。そしてその料金は1~2万。本当にカネがなければ、市役所に泣きついて生活保護になるという道もある。そうなると、弱っている老人ならば養護老人ホームなどがほぼ無料であてがわれることになる。民間企業の競争力とか優位性などないに等しい。

税金払わなくていいような社会福祉法人が役所から補助金受けてつくったような施設と、銀行から金借りてなんとか利益を出そうとしている民間企業とでは、同じ土俵では戦えないのだ。

日本人はみんなが言うほど金持ちでもないし、言葉は悪いが「もう死ぬだけ」の老人に対して、家族が大枚はたいてくれるとも思わない方がいい。


2015年9月6日日曜日

誤嚥、肺炎、ステルベン

夏に老人がかかる病気の代表選手といえば熱中症。言っていることがめちゃくちゃだったりすると、もともと認知症なのか、脳がオーバーヒートしているせいなのかはわからないこともしばしば。

どうやら認知症になると、暑い寒いといった感覚すらも鈍感になるようだ。「蚊に刺されるから」と真夏に窓を閉め切ったり、「寒い寒い」と布団を体に巻き付けている高齢者もみたことがある。「盗聴されるから」とか「毒ガス攻撃をされるから」とかと必死の形相で訴える人は、別な病気があるようなのでその手の病院にご紹介したりもする。

さて、9月にもなると涼しくなってくるので、夏の風物詩の熱中症もなりを潜めて、いつもの病気が目立つようになる。

そう、誤嚥性肺炎だ。

誤嚥性肺炎は人間の最終形態というか、ラスボスである。これに勝つことは残念ながら不可能だ。古くから「肺炎は老人の友」というそうだが、人の死亡率はどんな医療行為を行っても100%という現実は変えられない。だから医療なんてクソゲーだ、と喝破する人もいる。まあ、その手で有名な「時空の旅人」のように、どんなにがんばってみても、結局エンディングは残念な結末という意味では、なにをやっても虚しい面はあるけれども、夢やロマンだけではご飯が食べられないのはぼくら医療従事者も一緒。

例えば、よくあるシナリオをみてみよう。

介護施設入所中
    ↓
認知症がひどくなった
    ↓
自力で食べなくなった
    ↓
食事介助が必要になった。
    ↓
食事でむせるようになった
    ↓
 誤嚥性肺炎 発生!
    ↓
救急病院に搬送
    ↓
点滴・抗菌薬・絶食・リハビリ
    ↓
ある程度回復するが体力低下
    ↓
施設に戻るが再び誤嚥
    ↓
治療したが嚥下機能は低下したまま
    ↓
いよいよ食べられなくなった
    ↓
食べられないので介護施設では面倒見切れない
    ↓
 胃瘻にしますか ・・・ いいえ
    ↓
転院先探し
    ↓
みつかりません。
    ↓
自宅に連れて行きますか・・いいえ。老人介護で共倒れはまっぴら
    ↓
行き先がありません。
    ↓
コマンド
 ①国や役所に電凸する
 ②選挙でK党に投票する
 ③コネを使って入院を求める
 ④ドクターキリコに消してもらう
 ⑤入院中の病院からの電話に出ない
 ⑥担当医を恫喝する


実際、行き場のない老人の誤嚥性肺炎だと、医療現場がどうにかできる部分はほとんどない。

治療がとっくに終わった人は、家に帰れればいいのだけれど、そうもいかない。家に連れて帰ったら家族が面倒を見なければいけないから、それはそれで家族には大きな負担だとは思う。だが、入院していれば社会がかぶるコストでもあり、老人は邪魔者よばわりされるゆえんである。

檀家がいなくなったお寺が増えていると聞く。本堂とかに、もう治療もしなくていいっていう人たちを寝かせておいてもいいんじゃないかとすら思う。どこかのお寺で引き受けてくれるのだったら往診にいってもいい。救急車がじゃんじゃん来る病院の医者は、声に出さなくても、多かれ少なかれそんな気持ちで行き場のない患者さんを案じているものだと思う。

結局治らない誤嚥性肺炎。
どうせ避けられない未来なら、笑い飛ばしてしまえという発想も成り立つ。

昔、大学の学園祭で聞いたラップ。

「誤嚥、肺炎、ステルベン*、ちぇきら!」

*sterben(独)より。死亡を意味する医療界のスラング)

2015年6月20日土曜日

痰が詰まり、とどのつまり

痰がつまると窒息して死ぬ。

 病院の患者でいう痰は、道行くオヤジが「カーッ、ペッ」と道路に吐いているような、ネバネバした唾液ばかりとはかぎらない。呼吸器系にたまる液状の物体のことを広く「痰」と読んでいる。

 唾液が気管や肺に落ちてたまったもの、心不全や腎不全による肺水腫で肺胞から染み出してきたような血液中の水分、はたまた下気道感染で生じた白血球と病原体の死骸など、ひとくちに痰といっても意味はさまざまである。 

いずれにせよ、挿管して人工呼吸管理をしている患者だと、定期的に痰を吸引しなければならない。

気管がちくわだとすると、挿管だとその中にストローを入れたイメージになる。ストローが人工呼吸器につながるわけだ。ちなみに筆者はちくわにきゅうりを挿したものが好物である。

そのままだとストローとちくわの内壁に隙間ができる。これだと空気が漏れて換気がままならないので、カフ(風船)で密着させて空気の漏れを抑えるような仕組みになっている。カフの上が口、下が肺につながる。

口からたれてきた唾液がカフの上に溜まり、気管との隙間をたれて肺の方に落ちていって咳が出たり窒息することもある。カフ上吸引と言って低圧で痰を持続吸引してくれるマシンは以前からあったが、カフの下からも痰を持続吸引してくれるマシン(こういうすぐれものも最近世に出た。開発費も自腹だろうし、バカ売れする商品でもないのに患者さんのためを思って開発された先生方には頭が下がる。  

とカフ周辺の痰を吸引するのはわりと簡単だが、問題は痰が出てこない患者さんだ。気管支の奥深くに詰まっている痰をどう取るか。咳嗽反射で悶絶しようとも、苦しいが声が出せないので殴られたり蹴飛ばされたりしようとも(ふつうは鎮静をかけているのでこうはならないが)、うりゃうりゃうりゃーと吸引チューブを奥までつっこみ、引ける限りの痰を吸引してくる。鬼吸引とわたしは勝手に呼んでいる。ごめんなさいね、痰で死ぬよりマシだろうけどつらいよね…と念じつつ、ひたすら吸引。肺や気管の酸素まで吸引されて酸欠になるので、吸引と酸素投与をサンドイッチにして時間をかけて吸引する。吸引圧で粘膜から出血して血痰が出たり、血まみれになることも稀ではない。ちょうどそのへんで面会の家族が来ると、我々は非道なことをしているように思われて悪しざまに言われる。(というか、うちは田舎の病院なので面会時間外でも関係なしに患者家族が面会に来てしまう) 

ここまでしても痰が引けない、酸素飽和度が上がらないという人には気管支鏡を突っ込んで痰を吸引してくることになる。気管支鏡はそれなりに太いため、届く範囲もしれているので、理学療法士さんに泣きついて肺の奥から痰が出てくるように体位ドレナージをしてもらったり、RTXという怪しいマシンなどを駆使して排痰を試みるが引けないものは引けない。

「気管切開はどうですか」と患者さんの家族に言われたこともあるが、吸痰という作業がいくらか楽にはなるが、気管に穴をあけたからといって、溢れ出てくる痰の量が減るわけでもないので根本的には大した意味は無い。

そもそも痰の原料は体の水分なのだから、体液量を減らしてしまえという理屈もある。補液を絞って利尿をかければたしかに水分は減るので痰は減るが、血圧が下がったり血栓・塞栓が出来たりするので、もはや治療とはいいがたい状態になってくる。そもそも高齢者で心臓がへたって心不全となると、切れるカードもほとんどない。循環器内科に相談しても、「寿命ですよねえ」とつれない返事がかえってくる。

 こうなってくるともうお手上げである。痰で窒息死することが避けられませんよ、という厳しい話を家族にする。 酸素化が悪くなると、家族の希望でNPPVをつけたりする。適応という意味では微妙だが、心不全の治療ということで保険を通す。これで呼吸はいくらか楽になるが、平たく言うと圧力をかけて酸素ガスを肺に押し込む機械なので、痰がどんどん肺に詰まっていく。やがて痰が詰まって換気ができなくなり、天に帰ることになる。

痰が多い高齢者が病院から出されたらどうなるか。研修を受ければ介護士でも吸痰ができるようになったとはいえ、まだレアな存在だし、なかなか受け入れてくれる施設も多くない。そうした施設は当然コストが高く、家族の負担も厳しい。家に連れて帰ったら、24時間の吸痰を覚悟しなければならない。痰が詰まって死んだら異状死で警察を呼ばれるかもしれないなど悩みは尽きない。まあ警察がらみは在宅診療の先生がうまいこと処理してくれることが多いので、あまり心配しなくてよいのだが、気苦労としてはたいへんわかる。

退院した後を見越してやむなく早めに枯らしたいと思ったら、入院中に、①水分制限を医者に頼んで循環不全を期待、②NPPV装着で痰づまりによる窒息を促す、といった展開があるのかもしれない。 

2015年6月13日土曜日

痰を押し込むと早死に

一般の方とかガチの医療職でない方を対象に想定しているので、ぼくの経験論ばかりのこのブログだが、たまにはアカデミックな論文も読んでみよう。

 NEJM 372;23 June 4, 2015 
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1503326 High-Flow Oxygen through Nasal Cannula in Acute Hypoxemic Respiratory Failure 

挿管しての人工呼吸管理と、鼻から高流量の酸素を流した場合の両者をガチンコ比較。

 Whether noninvasive ventilation should be administered in patients with acute hypoxemic respiratory failure is debated. Therapy with high-flow oxygen through a nasal cannula may offer an alternative in patients with hypoxemia.

先のエントリーでもら書いたNPPVと、鼻から大量の酸素を流すマシンNHFとの比較。

METHODS 
We performed a multicenter, open-label trial in which we randomly assigned patients without hypercapnia who had acute hypoxemic respiratory failure and a ratio of the partial pressure of arterial oxygen to the fraction of inspired oxygen of 300 mm Hg or less to high-flow oxygen therapy, standard oxygen therapy delivered through a face mask, or noninvasive positive-pressure ventilation. The primary outcome was the proportion of patients intubated at day 28; secondary outcomes included all-cause mortality in the intensive care unit and at 90 days and the number of ventilator-free days at day 28. 

シビアな呼吸不全の患者をふりわけて、NPPVかNHFか、はたまた普通の酸素投与ではどうかを比べたというもの。

RESULTS 
A total of 310 patients were included in the analyses. The intubation rate (primary outcome) was 38% (40 of 106 patients) in the high-flow–oxygen group, 47% (44 of 94) in the standard group, and 50% (55 of 110) in the noninvasive-ventilation group (P=0.18 for all comparisons). The number of ventilator-free days at day 28 was significantly higher in the high-flow–oxygen group (24±8 days, vs. 22±10 in the standard-oxygen group and 19±12 in the noninvasive-ventilation group; P=0.02 for all comparisons). The hazard ratio for death at 90 days was 2.01 (95% confidence interval [CI], 1.01 to 3.99) with standard oxygen versus high-flow oxygen (P=0.046) and 2.50 (95% CI, 1.31 to 4.78) with noninvasive ventilation versus high-flow oxygen (P=0.006).

挿管せざるをえなくなったのが、NHFで38%、対照群で47%、NPPVで50%。28病日で人工呼吸器がいらなくなった割合は、NHFで有意に高かった。

CONCLUSIONS 
In patients with nonhypercapnic acute hypoxemic respiratory failure, treatment with high-flow oxygen, standard oxygen, or noninvasive ventilation did not result in significantly different intubation rates. There was a significant difference in favor of high-flow oxygen in 90-day mortality. (Funded by the Programme Hospitalier de Recherche Clinique Interrégional 2010 of the French Ministry of Health; FLORALI ClinicalTrials.gov number, NCT01320384.)

1型呼吸不全では、NPPV、NHF、普通の酸素投与で挿管になってしまった割合は差がなかった。が、90日後の死亡率には有意な差があった。

グラフが示されているけれど、加圧して酸素を押し込む呼吸補助は予後を良くしないという。この商売をやってるぼくらには軽く衝撃であった。圧をかけることで痰を気管支の奥深くに押し込むためというのも一因ではなかろうか。

2015年5月31日日曜日

「先生!パターン青、使徒です!!」

知らない人もいない新世紀エヴァンゲリオン。作中に出てくる人類に綾なす生物が「使徒」である。どこからともなく襲来し、総力あげた戦いとなるのは、病院における救急患者とも相似形である。

とりわけ、病院にやってくる高齢者に置き換えてみた。書きかけなので思いついたら加筆する。なお、http://matome.naver.jp/odai/2135348807467922301 を参考にさせていただいた。


第1使徒 アダム

自宅で発見され、せん妄インパクトを引き起こしたとされる恍惚の老人。通称「おじいちゃん」。同居の家族はいるが、鍵をかけられて日中は独居となっていた。老人宅に派遣された訪問看護師により意識レベル低下状態で発見され、その調査中に覚醒、そして光り輝くし尿を撒き散らすとともに、幻覚妄想と興奮の大爆発を起こし救急搬送。ちなみに、ハロペリドールの槍を用いることで、アダムを睡眠状態に還元しようとする過程で生じるのが錐体外路症状。Parkinson病では禁忌。

第2使徒 リリス

名前の由来は、アダムの最初の妻であるとされる「リリス」から。アダムとは異なる「生命の源」であり、アダム系を除く娘・息子・孫の始祖であり、その最終形態としてひ孫(=第18使徒リリン)を生み出した存在。通称「ひいばあちゃん」ともいう。
ひとたび救急搬送されれば、家族が大量に押し寄せ、救急外来の診察室はところ狭しと家族がひしめき合う。危篤状態で救命不能という状態を説明しても、DNAR(蘇生不要)という意思決定までには時間を要する。田舎である場合には、本家や分家、遠縁の親戚まで電話やメール、ラインで確認して決裁を求める光景がみられる。

第3使徒 サキエル

名前の由来はユダヤ・キリスト教伝承の「酒」を司る天使・木曜日の守護天使「サケエル」から。長年の大量飲酒と歯磨きをせずに床につく習慣から、誤嚥性肺炎にさいなまれている。誤嚥の威力はかなり強力なもので、梨状窩の特殊装甲をあっさり突破し、喉頭蓋に格納された声門を通過して、右肺下葉まで到達している。肺膿瘍を呈していることもしばしばである。

第4使徒 シャムシエル

名前の由来はユダヤ・キリスト教伝承の「昼」を司る天使「シャムシエル」から。昼夜逆転で不穏が著しいため、つなぎ服を着せられて筒状となった身体に、両手にミトンを持つ。イカに近い形をしており、夕食後から消灯前後から出現する。最後は深夜勤看護師のプログレッシヴ・拘束具での直接攻撃によって自由を奪われ、活動を停止。

第16使徒 アルミサエル

名前の由来はユダヤ・キリスト教伝承の「子宮」を司る天使「アルミサエル」から。

光るDNAのような、二重らせんの円環構造(プラスミド)が媒介するメタロβラクタマーゼを持つ。対象物を侵食し、融合して耐性を広げる習性を持つ。迎撃に出たカルバペネム、フルオロキノロンは侵食され、排除された。最終手段として宿主が死亡するまで隔離され、駆逐された。


2015年5月29日金曜日

海外の安楽死本

Dr Philip NitschkeとDr Fiona Stewartが書いた、"Killing Me Softly"という本を斜め読みしてみた。 このNitschke医師は豪州の人。安楽死の専門家として、数々の死にたい患者さんの自殺幇助をしてきた経歴から、当局から医師免許を停止されたそうだ。

彼がこの本でおすすめしているのが、ペントバルビタールの錠剤の内服だ。自殺に使われまくったために発売禁止になったので、はるばるメキシコまでいって調達してきた話なども書かれている。日本では、ラボナという似たような成分の内服薬があるが、似て非なるもので、大量に内服して死ねるものではないし、今どきの医者がこんなヤバい薬をおいそれと処方することはない。一般人が手に入れることも難しそうだ。

ちなみに女子高生あたりが睡眠薬を大量に飲んで救急搬送されてくることはたまにある。嫌がらせとかこらしめる目的で、鼻から太い管を突っ込んで、胃洗浄などをやる施設も未だにあるようだが、マイスリーとかを何十錠か飲んだくらいでは、ゲロ吐いて窒息でもしない限り、基本的に死ぬことはない。

Dr. Nitschkeが書いた本は、豪州の禁書目録に載ってしまい、発禁になっている。しかしwebでは入手できる。http://peacefulpillhandbook.com/

ここから辿って行くと、ヘリウムを吸って瞬間的に昏倒してそのまま死ねる装置、とかがある。
ヘリウムといえば、どこかのアイドルがバラエティの収録で吸って意識障害が出たアレである。酸素が含まれない気体を一気に吸えば、脳や心筋への酸素供給が絶たれるのはちょっと考えればわかるかと思う。

ほかには、急死したら犯罪が疑われて司法解剖されてしまうので、証拠が残らないように、地球上なら空気中にどこにでもある窒素を吸って死ぬ装置、とかも並んでいる。安楽死を看破するために、豪州政府では新たな検査法を開発したそうだが。

Dr.Nitschkeが、当局から「お前は本当に医者なのか」といわれるのはわかるのだが、彼が「じゃあ、苦しむ患者をいたずらに生かしているのも倫理的にどうなのよ」と思ったとして、こういう安楽死をサポートする活動に手を出している気持ちもわからなくはない。

「尊厳死」の6パターン

2015年5月28日に、日本病院会が-「尊厳死」-人のやすらかな自然の死についての考察―を発表した。

いつまで経っても国会が尊厳死法を制定できずにいることを苦々しく思ったようで、現場で困っている臨床医や患者さん、家族に対しての一助になればということらしい。ありがたいと思うが、これに準拠したからといって、別に司直の手から逃れられるわけでもないと思うが、偉い人達が集まってこうしたペーパーが世の中に出されているのなら警察・検察も少しは考えてくれるかもしれない。

内容を見てみよう。

・ 延命について以下の例のような場合、現在の医療では根治できないと医療チームが判断したときは、患者に苦痛を与えない最善の選択を家族あるいは関係者に説明し、提案する。
ア)高齢で寝たきりで認知症が進み、周囲と意志の疎通がとれないとき
イ)高齢で自力で経口摂取が不能になったとき
ウ)胃瘻造設されたが経口摂取への回復もなく意思の疎通がとれないとき
エ)高齢で誤飲に伴う肺炎で意識もなく回復が難しいとき
オ)癌末期で生命延長を望める有効な治療法がないと判断されるとき
カ)脳血管障害で意識の回復が望めないとき

まあ、これらはどうみても寿命といえるのではないか。理解も得やすいはずだ。病院に来れば無限の生命を得るかのように考えて、我々に無理難題を言ってくる家族もいる。そうなると、あまり話したくはないけれど、「野生動物の世界ではメシが食えなくなったり、立って歩けなくなったら生命として終わりですよ」という話をする。ただ「アフリカのサバンナと病院を一緒にするな」とか怒られたことはまだない。逆に「大声を上げてる人(注:認知症)とかもいるし、たしかに病院って動物園みたいなものですかね」と納得されたりもする。

月末なのでレセプトをチェックしていたのだが、誤嚥性肺炎の患者が8万点ぐらいになっていた。実に月80万円。ベッドに寝たきりで、意思疎通も図れず、日に3度、胃ろうから栄養剤を注入されるだけの高齢者。介護施設から救急搬送で来て、治療して良くなったもののMAXでここまでしか回復はしなかった。転院先を調整しているが、なかなか行き場もないので在院日数が長引いてこうした顛末になっているわけだが、健康保険の保険料をどれだけ上げてもこうした人たちの医療費までめんどうみていたらカバーできそうにない。ちなみに自己負担は44400円だそうだ。差額の75万は若い人たちが払うのだ。国保だから介護保険と通算して年末にはキャッシュバックがあるとも聞く。

こうした人達が「家族の希望」でいたずらに延命処置を求められる背景には、年金があると思う。家族が面会に来ない高齢者は結構多いと感じる。死んでしまえば年金がストップされるので、病院や施設に放り込んでひたすらに延命処置を求められる。直接会いに来るわけでもなく、電話で言われる。面談しようと連絡してもワン切りされたり、着拒されるのもしばしばだ。

上記のように、自己負担があるといっても年金が入ればプラスなのだから、ゴネてなるべく長く入院させ、楽して年金をもらってしまえ、という腹の内なのか。それなら入院したら年金を一時的にストップしたらどうなのだろう。全国的に巨額の医療費が節約できそうだ。じゃあ介護施設に流れるだけだというのなら、施設に入っている間も年金を止めたらどうだろう。プロの介護が必要なら、年金から天引きで。

さて、先のア~カの6種類に該当しても直ちに医療が打ち切られるわけではない。生きてさえいれば、急性期病院→慢性期病院→老健→特養→在宅→・・・など、段落とし的にいろんな施設を通過することになって、医療費や介護費用がかかる。が、「そこにも雇用が生まれるから、高齢者は長生きしていればいいのだ」と偉そうにいう気にはなれない。自分の給与明細をみたら、年金・健康保険・介護保険・税金で半分も持っていかれていた。五公五民で江戸時代と同じではないか(我々世代が多分もらえない年金など、税金と同じだとして)。これに子どもの教育費だの通勤で使う車の維持費だのを払ったらカツカツである。自分はもう若くもないけれど、若い人の血をすすって老人を生かすというのもそろそろ限界だと実感している。


 ・ 下記の事例はさらに難しい問題で、今回は議論されなかった。
ア)神経難病
イ)重症心身障害者 

ALSなどは団体が相当に手強いので、アンタッチャブルではある。患者さんが心身ともに苦悩されているのは本当に気の毒に思う。ただ、障害者のためというよりも関係者のためではないかと思うような活動もしばしばである。おっと、筆者もひどい目に遭ったことがあるので言を慎む。

霞ヶ関の厚労省ビルの前で炎天下でも障害者を車いすに乗せて並べ、マイクでがなってビラを撒いているような団体とかを見るとなんとも複雑である。