2014年1月4日土曜日

「枯らす」技術

仕事の合間にツイッターでぼやいていると、反響が多いツイートは、決まって看取りとか終末期に関するもの。

「『寿命のろうそくがもうすぐ燃え尽きそうだね』って状態で、老健や特養から救急車で運ばれてくる人は多いけれど、うちら医療従事者にできることなんておのずと限界がありますよ。いつまでも元気でいると思っていると足元をすくわれることになりますよ。人生どうやって閉じたいかあらかじめ家族で話しあっておいてくださいね」ってことを伝えたいという僕の願いは、誰かに届いているのだろうと思う。少しずつフォローしてくださる方が増えてきてありがたいことだと思っている。

別に自分よりも立派な医者や看護師さんはごまんといるわけだけれども、田舎勤めのしがない医者として僕が診ている患者さんやその家族がどうやって最期の日々を過ごしているのか、守秘義務にひっかからない範囲でぼやかしてお伝えするのにもきっと意味があるのだろうと思って続けている。

で、「格好のよい終末期の過ごし方」みたいな本は世の中にあふれてきていて、あえて僕のツイッターなりブログなりでトレースしなくたっていいだろう。

含蓄のある話やきちんとした臨床の実践は、緩和医療医 大津秀一先生 http://ameblo.jp/setakan/ とか鎌田 實先生http://www.kamataminoru.com/index.html とかの著書なりwebを参考にしていただくとして、このブログでは大御所があえて書けないことを書き散らかしてみようと思う。

それは、どうやったら「枯らす」ことができるか、だ。

救急車で運ばれるような病院に入院したら医療費に加えておむつやティッシュ、食事代などでかなりの金額が飛んでいく。急性期病院から出て行ってくれと言われて療養型に行っても同じこと。老健、特養と介護施設を回っていくなかでもどんどん金はかさんでいく。景気が悪い中で月々ウン十万円も老人に払える家庭なんてそうそうない。いくら貯金していたって足りないぐらいだ。

すごくドライに割り切ると、働き盛りや小さい子供を抱えた家庭が、老人につぎ込める金額なんて知れている。金がかかればかかるほど、どんなにお世話になったお年寄りも「金食い虫」として憎悪の対象に代わるし、何よりこれから生きていかなければならない人たちの財産が失われることになっては、何のための老人介護なのか訳がわからない。いっぱいお金を使ったけれども、家族が職を失ったり貧乏になっては老人が亡くなった後も不幸が続くことになる。

そういう悲惨な家族をそれなりの数見てきた医者としては、「医者にこういうお願いをすれば、こういうことをされて、その結果どれぐらいで逝きますよ」っていう知識を身につけてもらいたいと思う。遅かれ早かれ旅立つ定めの老人と、老人が死んだ後も生きていかなければならない家族とが現実的に折り合う点が、僕ら医療従事者にできるベストな看取りだと思うから。

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