2018年9月5日水曜日

目薬で毒殺


「目薬で夫を毒殺」容疑で妻を訴追 米 2018年9月5日Yahooニュース

米サウスカロライナ州ヨーク郡保安官事務所は8月31日、夫を毒殺した容疑でラナ・クレイトン容疑者(52)を逮捕、訴追したと発表した。クレイトン容疑者は、数日にわたって夫のスティーブン・クレイトンさん(64)が飲む水に目薬を入れ、毒殺した疑いがかけられている。

ラナ容疑者は、夫スティーブンさんが自宅で死んでいるのを発見された数週間後に逮捕された。毒物テストの結果、スティーブンさんの遺体から化学物質テトラヒドロゾリンが発見されたことが逮捕につながった。

この物質は、処方箋(しょほうせん)なしで購入できる市販の目薬やスプレー式点鼻薬にも含まれている。


元の記事がこれですね。機械翻訳したようなお手軽な記事ですねえ。

テトラヒドロゾリンは血管収縮薬です。毛細血管を縮めることで効果が現れます。

(目の場合)
白目が赤くなる「充血」は、毛細血管が広がって血流が増えて赤みが際だつためです。血管を縮めれば、血流が減って元どおり白くなります。

(鼻の場合)
鼻水がぐじゅぐじゅ出るのは、鼻の粘膜から水がしみ出してくるためです。「水」の材料は血液で、血管の壁から漏れてきます。血管を縮めてしまえば、原料が流れてこなくなるので鼻水が減ります。


「じゃあ、これを含む薬は何か?」ということで、PMDAこと独立行政法人医薬品医療機器総合機構に薬のデータベースがありますので調べてみましょう。
コールタイジン点鼻薬
テトラヒドロゾリン鼻用スプレー0.1%「ミナト」

これの単剤では、濃度が薄すぎて致死的な作用はなさそうです。
かといって、何十本も飲み物に混ぜたりしたら、味が変になってバレるでしょう。

ただ、添付文書を見てみますと、

・使用上の注意
(次の患者には慎重に投与すること)

1.冠動脈疾患のある患者
[血管を収縮して冠動脈疾患を増悪させるおそれがある。]

2。高血圧症の患者
[末梢血管を収縮して血圧を上昇させるおそれがある。]

3.甲状腺機能亢進症の患者
[甲状腺機能亢進症の患者は交感神経が興奮状態にあることが多い。]

4.糖尿病の患者
[肝臓のグリコーゲンを分解して血糖を上昇させる作用がある。]

アメリカですから、ターゲットとされた方は、おそらく肥満体だったのでは無いでしょうか。筆者の経験でも、ホームステイ先で台所に立っていたオカンが、夕飯を作りながらワンホールのケーキをむしゃむしゃ食べているような国ですからねえ。高血圧・糖尿病・虚血性心疾患ぐらいのコンボはあたりまえなんじゃないでしょうか。

心臓に栄養を送る冠動脈が、ギリギリ詰まるか詰まらないかすれすれの人が、こんな血管を縮める目薬を盛られたら、いよいよ血管が詰まってしまって、心筋梗塞で死亡するという展開になりそうです。

バランス良い食生活の日本人だと、目薬ごときを盛られたとしても、そうそう死ぬことはなさそうに思います。

あと、気になるのがこちら。

>当時、スティーブンさんの「気分の変動」が激しく、

となれば、抗うつ薬なんかを医者にもらっていても不思議はありません。

ここでキモになるのは、日本でも売られているMAO-B阻害薬です。これは、脳で働く神経伝達物質であるドパミンやセロトニンを破壊する酵素MAO-Bの働きを抑えます。壊されないわけですから、ドパミンが増えます。

MAO-B阻害薬、もともとはドパミンが枯渇するパーキンソン病の薬です。知っての通り、ドパミンが増えると気分がアガります。「もしかしたらヤバい薬なんじゃね?」と気がついてしまったあなたは賢いです。実際、この薬であるセレギリン(エフピー®)は覚せい剤原料として厳しく管理されています。ちょちょいと化学構造をいじれば、覚醒剤になってしまうということからも、効き目は推して知るべしですね。

実際、セレギリンは抗うつ薬としても使われていたそうです。今は適応がありませんが。


以下は邪推ですが、
(1)重症のうつになった夫が、抗うつ薬としてセレギリンを近所の医者からもらった。
   (もしかしたらパーキンソン病から来るうつ症状があったのかもしれないが不明)
(2)夫の飲んでいる薬を知った妻が、MAO-B阻害薬の作用を増強させると死に至ることを知る
(3)近所のドラッグストアで目薬をゲット。
(4)食事や飲み物にひたすら混入
(5)血圧が急上昇
(6)脳出血やらで死亡
という流れでしょうか。

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