kindleで出します。ぜひご覧いただければ幸いです。
冒頭をちょっと紹介。
ドクターキリコによろしく(仮題)
●はじめに
京都の安井金比羅宮(http://www.yasui-konpiragu.or.jp/)は、悪縁を絶ち、良縁を結ぶ神社だ。愛憎に満ちた絵馬がたくさん納められている。認知症で家族を長年泣かせてきた老人、不倫がこじれて相手から消えてほしいと呪いをかけられた人、ギャンブルがやめられず借金を重ねて妻や子供を不幸に陥れた人など、今すぐ死んでほしいと言われる人がこんなにいるのかと、複雑な気持ちになる神社だ。
そうはいっても、憎い相手の首を絞めたり、出刃包丁で刺したりということは普通できない。日本の警察は優秀だから逃げられないので、相手に復讐すると同時に自分の人生も終わってしまう。どんなに憎くて今すぐ殺してやりたいほどの相手でも、ぎりぎりのところで理性が働くから神頼みになるのだろう。
ところが、証拠が残らないならどうだろう。理性のタガが外れてしまわないとも限らない。今の日本では、人を殺してもほぼバレないシチュエーションがある。かなりの数の完全犯罪が行われているとぼくはみている。どこだろうか。山奥に穴を掘って埋めるとか、オウム真理教のように電磁波で遺体を焼いて灰にする、という話ではない。共犯者もいらず、スコップや大掛かりな設備もいらない。それは医療に紛れて人を死なせることだ。
入院中の病室で普通にあるものを使えば、急変とか病気の自然経過に見せかけて患者を死なせることができてしまう。入院中だけでない。持病があってクリニックとかから薬を処方されているような人も、持病で死んだように見せることができる。怪しければ警察が出動するが、違和感のない病死を演出できれば、警察とくにその中でも死体を扱うプロである検視官の目も欺けてしまうのだ。検視官ですら犯罪かどうかを見抜けないような死体は、そのまま荼毘に付されて証拠も残らない。犯人の高笑いが聞こえてくる。
治安がよい日本もどんどん物騒になってきた。近所の住人が突然ナイフを持って襲ってきたり、保育園のお迎えに行ったら「幸せそうでムカつく」などと車が突っ込んでくるような時代だ。なにも悪いことをした覚えがなくても、勝手に恨まれていることもあるかもしれない。昔から「キ●●イに刃物」というけれど、悪意に満ちた人たちに病院の設備や医薬品が悪用されれば大変だ。しっぽを残さずに殺されてしまうこともあるのだから。そして犯人以外には気づかれることもなく、「持病のせいで死んだのね」「若いのに気の毒にね」などと、殺された後でどれだけ惜しまれてもどうしようもない。
この本では、医療にまぎれた「医療犯罪」で殺されないようにするための知識を提供したい。リアリティを持って読んでもらいたいし、身を守るうえでの知識として、くわしい描写も入っている。かといって読者の皆さんが、こうした知識を悪用してゆめゆめ誰かを殺害しないことを信じている。
「歩み入る者に安らぎを、去りゆく者には幸せを」。病院=ホスピタルが、語源が同じホテルと同様、こうした場であり続けるように願ってやまない。
2015年初夏 mhlworz
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