2018年8月3日金曜日

亜硝酸ナトリウム

オーストラリアで野生の豚が増えすぎ、減らす方法を研究したところ、亜硝酸ナトリウムが便利であることがわかりました。豚は何でも食べてもりもり繁殖するので、野生化した豚は農作物に多大な害を及ぼすようです。

亜硝酸ナトリウムは肉に使われる食品添加物で、いわゆる防腐剤です。古くなった肉の色を鮮やかにして見栄えをよくしたり、食中毒の原因となるボツリヌス菌などの繁殖を抑えます。肉の生臭さもごまかします。ハムやベーコン、ホットドッグのような肉が腐らないようにするわけです。

これを飲んで中毒になった人が、「防腐剤は腐った人生を片付けるのにも使える」とうそぶいていましたが、亜硝酸ナトリウムとはどのような薬なのでしょうか。

■メカニズム

亜硝酸ナトリウムは血液に入ると、赤血球中のヘモグロビンを変化させてメトヘモグロビンに変えます。このメトヘモグロビンは、ヘモグロビンと違って、酸素を結合して輸送する能力がはるかに低下しています。酸素が運べないので、メトヘモグロビンを多く含む血液は赤みを失い、茶色に見えます。こうして全身が酸欠(低酸素血症)になるので、中枢神経系や主要な臓器が障害され、死にいたります。

井戸水に亜硝酸が含まれていて、知らずにそれで粉ミルクを溶いて赤ちゃんに飲ませたらメトヘモグロビン血症になった事例もあります。

メトヘモグロビンが増えると困るわけで、生体にはこれをヘモグロビンに急速に還元する酵素があります。メトヘモグロビンレダクターゼ(別名ジアホラーゼ、シトクロムb5レダクターゼ)です。が、亜硝酸塩の量が多すぎると、こうした保護機構は圧倒されてしまいます。酵素が邪魔されるので亜硝酸塩の効果が増します。進化したとはいっても、豚も人もこの辺の弱点はおんなじです。

また、玄米や米ぬかから作られるフィチン酸(イノシトールヘキサホスフェート,IP6ともいう)も酵素を阻害します。強い金属キレート作用があるので、玄米などをよく食べる人は、ミネラルが吸収されないんじゃないかと心配する人もいるくらいです。イノシトールのサプリは健康食品の店で容易に購入できます。

■症状

大量の亜硝酸ナトリウムで中毒をきたすと、酸欠になって意識がなくなり、最悪では死に至ります。その前に眠くなったり、混乱がみられたり、頭痛などが生じます。

具体的には、血中のメトヘモグロビンが15‐20%以上に増加するとチアノーゼを生じ、40%以上では頭痛やめまい、呼吸困難、意識障害などが出現します(日本救急医学会web)。

治療としてはメチレンブルーを注射したりします。理科の実験で「酸化と還元」を勉強する時に使った、あれです。

■亜硝酸ナトリウムで死ぬ

亜硝酸ナトリウムの推定致死量は成人でわずか3gです。寝たきり老人で、鼻から管が入れられて経腸栄養が注入されている人だと、栄養剤に混入されたらひとたまりもありません。ヂアミトールを点滴するには、注射器や点滴ラインが必要ですが、鼻管だったら病院でなくても決行できてしまいます。

被害を防ぐために、手口を紹介しておきましょう。対策を講じてほしいと思います。

(材料)
亜硝酸ナトリウム   10g
水          50ml
重曹         小さじ1
イノシトール 500mg 100カプセル [並行輸入品]   10錠
吐き気止め(プリンペラン 5mg 錠  6錠)
痛み止め (ロキソニン  60mg錠  2錠)

0 亜硝酸ナトリウム液を飲む30分前に吐き気止めと痛み止め、イノシトール入りのカプセルを飲みます。
1  水に亜硝酸ナトリウムを溶かします。非常に水に溶けやすいです。
2 1を飲む直前に、水に炭酸水素ナトリウム 小さじ1杯を溶かして飲みます。
3 1を一気に飲み干します。味は目立たず、吐くほどマズいものではなさそうです

※1 亜硝酸ナトリウムは血管平滑筋をゆるめて血管を拡張させるので、血圧が下がってショックを起こして死に至ります。また、血管が開いて血流が増えるために頭痛が起こりますが、鎮痛薬を飲んでおけば防ぐことができます。

※2 胃酸を中和すると亜硝酸ナトリウムがすばやく吸収されます。

■入手法 

亜硝酸ナトリウムは食品の添加物として広く使われているので、入手も簡単です。ホームセンターでも買えるところがありますし、インターネットで簡単に手に入ります。売価だけみれば海外の方が安いですが、送料を考えるとamazonや楽天で購入するのが良いでしょう。

物質的にも非常に安定していて、管理が良ければほとんど永久に保管できます。ただ空気中の湿気を吸収しますので、密閉容器に保存します。冷暗所でなくても常温で構いません。不要になった亜硝酸塩はトイレに流せば処分も簡単です。


身の回りにこういった薬を集めている人がいたら、命を狙われているかも知れませんので、気をつけてください。また、自分自身が死ぬほど辛いときには、こうした薬を手に入れて自決しようと思うかもしれません。そんなときは緩和医療科とか心療内科とかの門をたたくことをおすすめします。力になってくれるはずです。

日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
聞きたい情報があればこちらからお寄せ下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1nwfWK0bg3ILwCWzdYpF1eu4MjgRpuTn5Szb6-uMQo4s

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