2018年7月24日火曜日

魂のサフラン

変わったものを食べて亡くなる人はいるものです。身の回りによくあるものなら、何の気なしに食べて、誤って死んでしまうこともあるのですね。

最近報道されているのがこれ。
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有毒なイヌサフランの球根で食中毒、女性死亡
2018年7月24日 06時12分 読売新聞

北海道・帯広保健所は23日、同保健所管内の80歳代女性が、有毒成分を含むユリ科のイヌサフランを誤って食べ、食中毒症状で死亡したと発表した。球根をジャガイモやタマネギと間違えて食べたとみて注意を呼び掛けている。


北海道帯広保健所提供


発表によると、女性は12日、自宅庭で採取した球根を調理して食べ、夜に嘔吐おうとや下痢、腹痛などを訴えて救急搬送され、14日に病院で死亡した。同保健所が家族から確認した。道警の司法解剖で、体内から有毒成分のコルヒチンが検出され、女性宅庭からコルヒチンを含む数少ない植物で知られるイヌサフランの球根が確認された。

イヌサフランは観賞植物で秋に紫色の花を咲かせ、ホームセンターなどで購入できる。葉や種子、茎、球根に有毒成分を含む。今年4月には岩見沢保健所管内で70歳代男性がギョウジャニンニクの葉と間違えて食べて死亡している。
帯広保健所は「葉が枯れるこの時期も球根を間違えて食べないよう、注意してほしい」と呼び掛けている。

朝日新聞でも取り上げられています。

イヌサフランは葉の形がギョウジャニンニクと似ており、道内では2013年6月~今年4月に6件の誤食例(推定含む)があり、4人が死亡している。



NHKの報道では、
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多くのケースは、食用のギョウジャニンニクと間違えて葉を食べたことによる食中毒ですが、平成25年には、イヌサフランの球根をミョウガと間違えて食べた札幌市の女性が一時、入院しました。

また、宮城県によりますとおととし、県内の男性がギョウジャニンニクの根と間違えて、イヌサフランの球根を食べて亡くなるなど、球根による食中毒は道外でも起きています。
保健所によりますと、イヌサフランは、葉はギョウジャニンニクに、球根はジャガイモやタマネギに似ているということです。

見分けるポイントは、イヌサフランの葉にはギョウジャニンニクのようなにおいがありません。また、ギョウジャニンニクの茎の根元にあるような赤味がないということです。
さらに、葉の形ではイヌサフランはジャガイモやタマネギと違った形をしているということです。
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5年で6件の中毒、うち4人死亡ですか。かなり強力な毒性といえます。ただ、ちょっと下痢したとか吐いた、ってケースは、カッコ悪くて保健所に届けてない可能性はありますね。

私も経験がありますが、なにより違いは匂いです。ギョウジャニンニクは文字通りニンニク臭がします。臭いです。イヌサフランと間違えるのは、鼻が詰まってるような気もしますが、育ち具合によっては匂わないのかもしれません。一般的には、イヌサフランの方が葉っぱの枚数が多いとか、芽を揉んでもニンニク臭がしないとか、球根がデカくて茶色いとか、いろいろ違いがあるようです。でも、「せっかく取ったんだからとにかく喰う!」と決めていたら、違いには目がいかないかもしれません。

さて、このギョウジャニンニク(アイヌネギ)、命がけで食べたくなるような、そんなにウマいたべものなのか、気になりますことでしょう。https://macaro-ni.jp/51561によると、

>ニンニクの香りがして根にはラッキョウのような形の茎が付いた山菜なのです。
●基本は山菜と考えると、しょう油漬けや酢味噌和え、天ぷらなどの調理方法がおすすめ
●風味はニンニクなので、たくさん食べてしまうとニンニク臭はしますが、お酒のお供に一品和え物にあると辛味がクセになりお酒がすすみそう

北国産まれの筆者としては、ジンギスカンに入れるのが絶品でした。ちまたの山菜好きにもたまらんのでしょう。そんなふうに、野山に分け入って、草木をむしってくるような元気な高齢者も、イヌサフランの毒性には勝てません。

●毒性
毒性成分としてコルヒチンを有する。球根に 0.2~0.5%含まれている。コルヒチンの 致死量は 1~6mg のため、10g(大体 1 球)で死亡する可能性が高い。染色体倍加剤、痛 風治療薬などに含まれるものである。ヨーロッパ中南部~北アフリカ原産の球根植物で あり、日本には明治時代に渡来し、園芸植物として広く植えられる。
(内閣府食品安全委員会webより)

注目すべきは、ここ。
>球根1個で死亡する可能性が高い

この花、イヌサフランですが、楽天だと球根が5個で2000円で売られています。
バラで球根1個だけ買うと、送料別で420円。その辺のホームセンターだと200円ぐらい。
イヌとはdogではなくて、役に立たないという意味らしいです。
こんなのを、「猛暑に負けないように、夏野菜ですよ、カレーに入れましたよ」とか言って食べさせられると、もう大変です。じゃがいもの代わりにゴロゴロ入れられている球根を知らずにほお張ったら、もう危険です。イヌサフランの食感がカレーの匂いや香りでごまかされているところに、有毒成分のコルヒチンが作用して死んでしまいます。

●症状
嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難が生じ、重症の場合は死亡する。 コルヒチンは刺激性、細胞分裂防止性を持っている。ヒトの場合、代謝され強力な細胞刺激剤のオキシジコルヒチンになり、コレラに似た症状が現れ心臓欠陥性虚脱で 36 時間 以内に死亡する。 (内閣府食品安全委員会webより)

イヌサフラン入りカレーなんかを喰わされたときのイメージです。
1)「変わった味だが、まあこんなもんか」
2)3~4時間で、嘔吐、下痢が来る。「悪いものでも食ったかなあ」
3)腹が痛くなり、病院に行く。
 医者「心当たりはありますか」
 患者「カレーを食べました」
 医者「胃腸炎ですね。これを飲んで家で休んでてください」
4)帰宅。下痢が収まらない。水っぽい下痢がダラダラ続く。
5)脱水がひどくなり、病院に。点滴をされるが帰宅。
6)家で寝ていると、致死性不整脈が起こって死亡。
7)家で死んだので警察が検視に来るが、「不審な様子もないし、解剖しないでいいべ。病死病死。とりあえず、急性心不全?」ってことにされて原因不明のまま火葬。

患者さんがイヌサフランがカレーに入っていたことを知らなければ、わざわざ医者に申告しません。食中毒とわからなければ、医者から保健所に通報されることもなく、真相はわかりませんね。

ひそかに命を奪えてしまうという意味では、和歌山のヒ素入りカレー事件よりも、ある意味怖いかもしれません。

日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
聞きたい情報があればこちらからお寄せ下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1nwfWK0bg3ILwCWzdYpF1eu4MjgRpuTn5Szb6-uMQo4s




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