国が在宅医療を推進していますから、点滴を刺したまま家で療養している高齢者も普通になりました。謳い文句は「最期は住み慣れたところで」みたいなハートウォーミングなものですが、役所の本音は医療費削減であることは暗黙の了解になっています。
今回の事件で、点滴ラインが入っていれば、そのへんのドラッグストアで買った消毒薬を注入して殺せてしまうということがバレてしまいました。ヂアミトールでもいいですし、別な名前で同じ成分(塩化ベンザルコニウム)が入った消毒液もあります。こちらだと500mlで300円ぐらいとお手軽です。
かつてこの手の事件では、塩化カリウムや塩化カルシウム、亜硝酸ナトリウムなどが使われてきましたが、粉を溶かしたり調製したりする手間が一切ないことから、ヂアミトールは犯罪者にとっては便利な代物です。今後模倣犯が大量に出てくることが懸念されます。
ちなみに、オーストラリアで安楽死や尊厳死を支援する活動をしている、EXIT internationalでは、液体窒素で安楽死するマシンを開発中ですが、これで死を迎えるにしても数十万円はかかります。安楽死が合法化されているスイスに渡ったりすれば数百万です。ヂアミトール注射はそれに比べれば激安です。死にさえすれば、という発想で自殺幇助に使われてしまうかもしれません。
自分が懸念するのは、エイジズムからの殺人です。
在宅医療が介入していれば、家の一角に介護ベッドが置かれて、高齢者が寝ていることが多いでしょう。この周りにも医療グッズが置かれます。病院だとベッドサイドには大した物品が置かれていません。ナースステーションから物が詰まったカートをごろごろ押していくのも対した負担ではないからです。かたや在宅医療では訪問看護のナースが来るまで時間がかかります。家に出入りする都度、大荷物をもって玄関から出入りするのも大変ですから、信用できる家族の家には物品を置かせてもらうこともしばしばです。患者さんによってはシリンジ(注射器)も置いたりします。
もし、ダークな誰かが注射器を使ってピューッと消毒薬なんかを注射したら、なすすべがありません。不用心ですが、まだまだ田舎だと鍵をかけない習慣の家も多いですし、「訪問診療は勝手に家に上がり込んで構わないから」という気前の良いご家庭もあります。日中は家の人が仕事に出ているが医療者に鍵は渡したくない、たいして盗られるものもないから開けておくという、よくわからない家も案外あります。
そんなところに、テロリストのような輩が来たらどうでしょう。
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人を殺害した男は、障害者への敵意や憎悪を犯行のきっかけだと述べていました。おもてに出すかどうかは別としても、高齢者のために医療費や年金をたっぷり負担させられている、そのために自分の安月給がさらに減る、などと憤っている人は結構おります。
昔ながらの家だと、介護ベッドはだいたい日当たりの良い一階の南側の部屋に置かれます。日当たりが良いということは、敷地外からも目につく位置で侵入しやすかったりします。狙われかねません。
家での療養を選ぶのは、家族にとっても一大決心です。24時間の介護負担に付き合っていくということを意味します。そのように大事にされている家族が、ちょっと買い物に行っている間に消毒薬を注射されて変わり果てた姿になっていた、というような事態が起こることも想定しなければならないのかもしれません。
今回は病院でのできごとでしたが、サイコパスの訪問看護師が毒薬を注射して回る、という事態も考えねばないのでしょうか。となると、本当に嫌な時代になりました。
日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
聞きたい情報があればこちらからお寄せ下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1nwfWK0bg3ILwCWzdYpF1eu4MjgRpuTn5Szb6-uMQo4s
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