毎日新聞2018年7月9日 19時49分(最終更新 7月9日 23時43分)から引用
神奈川県警、元看護師を88歳患者の殺人容疑で送検
横浜市の旧大口病院で2016年9月、入院患者2人が中毒死した事件で、西川惣蔵さん(当時88歳)を殺害したとして逮捕された元看護師、久保木愛弓容疑者(31)が通常は薄めて使う消毒液を原液のまま投与した疑いがあることが、捜査関係者への取材で判明した。消毒液は高濃度で体内に入ると多臓器不全などを起こす恐れがある。神奈川県警は、久保木容疑者が殺意をもって投与したとみて調べている。
(中略)
西川さんが死亡したのは16年9月18日で、目撃証言では、久保木容疑者が1人で病室に入室した直後に容体が急変したとされる。遺体からは高濃度のヂアミトールの成分(界面活性剤)が検出されており、久保木容疑者が原液を注射器で点滴側管から一気に投与した可能性がある。
ヂアミトールは医療器具や手指の消毒用で劇薬指定はされていない。大口病院ではナースステーションなどに備え付け、ボトルで保管された原液を水で100倍ほどに薄めて使っていたという。久保木容疑者は備え付けのヂアミトールを使ったとみられる。
(引用終わり)
この薬、「ヂ」アミトールという、いかにもなネーミングからはえらく古いと思われる。添付文書では再評価が1982年というからそれ以前の薬だろうが、それ以上はネットではたどり着けなかった。ちなみに横文字だと「Germitol」であり、Germ(バイ菌)+アルコールを示す接尾辞-olからきた造語なのだろう。
このシリアルキラーとされている看護師、消毒薬を点滴したらどうなるか、という論文を読んでいたかどうかはしらない。pubmedでもbenzalkonium chlorideとか injection とかで検索しても殆ど出てこないのだから、この看護師のオリジナルと考えてよさそうだ。まったく、狂気の沙汰としか思われないが。
pubmedで見つけた数少ない臨床報告がこれ。
静脈内注射によるBZK毒性の報告例
40代の男性看護師。自殺目的で10%塩化ベンザルコニウム15mlを左前腕の静脈に注射し1時間後に入院。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)となり、連日連夜の血液透析を行ってARDSを治療し、21日目に退院。
おそらく数千万円単位で医療費をぶっこんで救命したのだろう。自殺したい、死なせてくれ、という奴に夜も寝ないで泊まり込んで救命する医療チームにはほんとに敬服する。自分はアホらしくて性格的に無理だ。
自分は、死にたくてそういう行為に及んだ人はそっとしておけば良いと思っているので、誰かの払った健康保険料を使って「生死の境をさまよう貴重な体験」をさせてやる優しさはない。誰が救急車を呼んだか知らないが、本人からすれば大きなお世話だろう。
いろんな物品をそろえて自宅で注射するという周到さの一方、わざわざ自宅という場所を選んで注射するというアンバランスさからは、誰かに見つけてほしいといったメンタル面の危うさが見え隠れする。殺人はもってのほかだが、自殺未遂も人に迷惑をかけるには違いないのだから、ぜひやめていただいて、早いところ精神科なり心療内科なり、医療機関を受診して落ち着いてほしいところである。
医療関係者として、というよりも、一納税者として、貴重な医療費や保険料が意味不明に使われるのは勘弁してほしいとも思うし。
日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
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