2018年7月26日木曜日

アミトリプチリン


三環系抗うつ薬(以下、TCA)は歴史のある薬です。言い換えれば、安全性がそんなにうるさく言われていなかった頃の薬ってことになるでしょうか。

●TCAの歴史
1960年代に入ると、TCAは抗うつ薬として広まりました。しかし、治療域が狭い、つまり、抗うつ薬として治療に使われる用量と、毒性が出る用量とが近いのが問題となりました。うつ病の患者が意図的に過量摂取したり、誤って大量に飲んでしまったりする危険性があったわけです。

リスクを知ってか知らずか大量に飲んでしまって、患者に死なれでもしたら、製薬会社としては訴えられて負けてしまうかもしれません。アメリカみたいな訴訟大国だったら、会社の命運に関わります。そういうわけでもっと安全な抗うつ薬が開発され、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などがTCAに取って代わりました。TCAは難治性の神経因性疼痛(例えば、頑固な三叉神経痛)とか、片頭痛の治療とかに使われていますが、一時期ほどの売上はなくなりました。いい薬ではあるのですが、時代ですね。

●TCAで安楽死
そういうわけで、本来の使い方ではない形でTCAを使うと、「信頼性の高い致死的薬物」になります。いくつかの特徴が「有用」といえます。とくに心毒性と中枢神経系への作用に着目です。中枢神経、要は脳の活性を下げます。通常の量だと、余計なことを考えなくなって不安が消えるなど、精神のバランスを保つのに役立ちますが、多量に摂取すると、眠くなり(鎮静)、さらには昏睡に陥ります。心臓に対しては、ポンプの作用が低下して血圧が下がり、不整脈も起こって死をもたらします。まとめると、TCAをたくさん飲むと眠くなって不整脈が起こって死ぬ、わけです。

●アミトリプチリン
アミトリプチリンはTCAの中でも鎮静作用が強力で、特に致死的な薬物です。医者から処方された薬は、くれぐれも子供の手の届かないところに保管してください。

日本ではアミトリプチリンの成分を10mgまたは25mg含む製剤で売られています。商品名だと、トリプタノール®がメジャーです。

添付文書を引用しましょう。
適応:うつ病・うつ状態: アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人 1 日30~75mgを初期用量とし、 1 日150mgまで漸増し、分割経口投与する。まれに 300mgまで増量することもある。 なお、年齢、症状により適宜減量する。

夜尿症: アミトリプチリン塩酸塩として、 1 日10~30mgを就寝前に経口投 与する。 なお、年齢、症状により適宜減量する。

末梢性神経障害性疼痛: アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人 1 日10mgを初期用量 とし、その後、年齢、症状により適宜増減するが、 1 日150mgを超えないこと。

ヨーロッパだとあちらの方は体格がでかいこともあって、50mg錠がメジャーなようです。海外から個人輸入する場合には、商品名がEndepとかElavilになります。致死量は諸説ありますが8g程度といわれています。


●アミトリプチリンを使って平穏死する方法

致死量の8gをゲットするためには、不眠症で1日30mgを処方してもらったとして、8000mg/30mg=270日分です。足繁く精神科なり心療内科に通わねばなりません。ただ、「アミトリプチリンをよこせ」と名指しで要求されると、ふつうの医者は勘付きます。「自殺とか人殺し目的で薬を集めてるんじゃないか」と。そうなると、他の薬が処方されたり、専門の医療機関に行くように勧められます。

医者だって、人殺しには成りたくないですから当然です。

これ以上書くと、警察に怒られるので一旦打ち止めです。
続きが読みたい方がもしいれば、下記からコメント下さい


日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
聞きたい情報があればこちらからお寄せ下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1nwfWK0bg3ILwCWzdYpF1eu4MjgRpuTn5Szb6-uMQo4s




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