2018年7月27日金曜日

プロポキシフェン

旦那がじゃまになったので、医者からもらった眠剤を旦那に飲ませて抵抗できなくしたうえで、不倫相手と共謀して殺した、みたいなニュースが流れています。医者が出す薬というのは、処方された人だけに使ってほしいのですが、悪用されると恐ろしいですね。

薬は怖いぞ、という話でいうと、ある種の鎮痛薬を大量に飲むと死んでしまいます。日本や先進諸国だと販売されていませんが、海外旅行にいったときに、街角の薬局で買える国もあるそうです。もしかすると、顔見知りの人から大量に飲まされて殺されることがあるかもしれません。知識があっても損はしないので、ご参考までに紹介します。

●プロポキシフェン
そんな薬のひとつが、プロポキシフェン(デキストプロポキシフェンナプシラート)です。ゲットするには医師の処方箋が必要です。一般的な鎮痛薬が効かないとき、つまりはアセトアミノフェン(タイレノール®)とか、ロキソニン®とかでは、効き目が不十分なときに処方されます。プロポキシフェンやジェネリックは、ベストテンに入るぐらいの売上でしたが、米国やカナダでは2010年に発売中止になりました。まだ売られている他の国では、ダーボン(Darvon)、ドルクセン(Doloxene)、およびデフロナル(Depronal)などがメジャーなブランドのようです。

●危険な理由
発売中止になった理由のひとつが、プロポキシフェンの治療域が非常に狭いことです。つまり、痛みに効く用量と死ぬ用量との差がごく小さいのです。個人差もあるので、「●ミリグラム飲んだからもう助からない」とか「まだ●ミリだから大丈夫」というように、摂取した量だけをみて、致死量かどうかを判断することはできません。ユーザーからすれば、どんだけ飲んだら安全かわからないような薬を処方されても困りますね。

酒と一緒に飲むと、毒性が増強します。酒+眠剤+プロポキシフェン、とりわけ、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬との組合せが最凶とされます。オピオイド(要は医療用の麻薬)と同じように、この薬が代謝されると心毒性も生じます。こうして、「プロポキシフェンは安楽死できる」という評判がたち、アングラな世界で人気を博してしまいました。

市販のパッケージだと、1箱50カプセル入りです。1カプセルあたり、成分100mgが含まれていますから、10グラムを集めるためには、医者から痛み止めを約23週間分もらえば良いという計算になります。1日に46カプセル(400600mg)が処方量ですので、取り立てて多い量ではないでしょう。これに、ベンゾジアゼピン系で長時間作用型の睡眠薬を10錠ほど飲むと死に至ります。

●手順
1)シートからプロポキシフェンのカプセルを取り出す。
2)カプセルをはさみで切り開く
3) カプセルの中に入っているプロポキシフェンの粉末10gをコップに入れる。
4) ベンゾジアゼピン系の眠剤(例えばロラゼパム30mg)もコップに投入
5)軽食を摂り、吐き気止め(例えばプリンペラン®)を飲む
6)4に水100mlを入れる。水に溶けないので、スプーンでかき混ぜて懸濁液を飲む。

こういう手間をかけないと致死量は摂れないので、不用意に薬を飲まされて殺されてしまうことはまず無いかと思いますが、油断は禁物です。海外には日本にはない危険があることも念頭に置きましょう。

また自分自身が死ぬほど辛いときには、海外で薬を手に入れて自決しようと思うかもしれません。そんなときは緩和医療科とか心療内科とかの門をたたくことをおすすめします。力になってくれるはずです。


日本でもできる「安楽死」「尊厳死」について、医者として質問に答えます。
聞きたい情報があればこちらからお寄せ下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1nwfWK0bg3ILwCWzdYpF1eu4MjgRpuTn5Szb6-uMQo4s

0 件のコメント:

コメントを投稿